ジェレミー・セイファート監督のセルフドキュメンタリー『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』はタイトル通り、遺伝子組み換え食品とは何なのかを追求したドキュメンタリー映画です。
GMのことを誰も知らない
追求とは言っても、タイトルからして子供の疑問になっているように、専門的な話というよりは誰もが抱く素朴な疑問の答えを求めていろいろな人に話を聞きに行くという話。
周囲の人に話を聞くとGMがどんなものかだれも知らないのに、アメリカでは加工食品のほとんどにGMが含まれ、作物でも大豆の91%がGMなどすでにGMが生産の大部分を占めている穀物が多くあることがわかってきます。
そして、最大の疑問は「GMは安全なのか」という疑問。果たして子供たちに食べさせていいものなのかを探っていきます。
この疑問については最後まで見ればある程度の事実がわかるというか、子供に食べさせるかどうか判断する材料くらいは得られるので、映画の目的のひとつは果たせたというべきでしょう。そしてそこでわかることは私たちのこれからの行動の指針になるという意味で、見る価値はあると思います。
わからないことの怖さ
でも、ご存じの方も多いいと思いますが、GMが人体に害があるかはまだ誰にもわからないこと。あるかもしれないし、無いかもしれないというのが事実らしい事実なのです。
この「わからなさ」こそがGMの本当の怖さなのかもしれません。わからないから科学者などに「大丈夫だ」と言われれば「大丈夫なのかな」と思ってしまう。でも別の科学者は「危険だ」という。そして、そのどちらも後ろ盾が居て、その後ろ盾の利益のために発言しているかもしれないという別の「わからなさ」もあるのです。
この「わからなさ」を少しでも減じるという意味でこのドキュメンタリー映画には意味があることは間違いありません。
特に終盤に登場する2年間マウスで実験を行ったというセラリーニ教授の研究成果などは、それを知っているのと知らないのとでは見方が大きく変わります。それに対してモンサントなどのアグリテック企業が圧力を加えていることも明らかになります。
繰り返し訴えることの大事さ
ただこの映画を見ていると、既視感というか繰り返し言われてきたことを言っているに過ぎないという気もしてきてしまいます。
この映画は社会派のドキュメンタリーの一つの型にハマっていて、素朴な疑問から社会問題を取り上げ、取材をして知見を深め、それを共有し、最後に行動を促します。同じ色がテーマの映画なら『フード・インク』もそうだし、『キング・コーン』もそうだし、出てくる人もちょっとかぶっていたり、トピックも共通していたりして、「あー知ってる知ってる」とつい思ってしまいます。
そして、食や環境がテーマのドキュメンタリーはどれもそうですが、行き着くところは資本主義の問題で、グローバル企業の利益のために大衆が搾取されているという話になります。それに対抗するために大事なのは連帯だ、みんなで行動しよう!となります。
ただ、繰り返しだからといって切り捨ててしまってもいけません。こういう事実は繰り返し語られて、届いていない人にも届くようにし、知っている人も何度も聞くことで忘れないようにして、行動を続ける動機づけにしなければいけない。
いわばこのような映画が繰り返し生まれること自体が運動であると捉えるべきなのです。
だから「知ってるよ」と思った人にもぜひ見てほしいし、見逃している『モンサントの不自然な食べもの』も見なければいけないなぁと思いました。
『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』
2013年/アメリカ/87分
監督・脚本・出演:ジェレミー・セイファート
https://socine.info/2020/05/01/gmo/https://i2.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2020/05/gmo_main.jpg?fit=1024%2C576&ssl=1https://i2.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2020/05/gmo_main.jpg?resize=150%2C150&ssl=1ishimuraMovieVODドキュメンタリー,モンサントジェレミー・セイファート監督のセルフドキュメンタリー『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』はタイトル通り、遺伝子組み換え食品とは何なのかを追求したドキュメンタリー映画です。
GMのことを誰も知らない
追求とは言っても、タイトルからして子供の疑問になっているように、専門的な話というよりは誰もが抱く素朴な疑問の答えを求めていろいろな人に話を聞きに行くという話。
周囲の人に話を聞くとGMがどんなものかだれも知らないのに、アメリカでは加工食品のほとんどにGMが含まれ、作物でも大豆の91%がGMなどすでにGMが生産の大部分を占めている穀物が多くあることがわかってきます。
そして、最大の疑問は「GMは安全なのか」という疑問。果たして子供たちに食べさせていいものなのかを探っていきます。
この疑問については最後まで見ればある程度の事実がわかるというか、子供に食べさせるかどうか判断する材料くらいは得られるので、映画の目的のひとつは果たせたというべきでしょう。そしてそこでわかることは私たちのこれからの行動の指針になるという意味で、見る価値はあると思います。
わからないことの怖さ
でも、ご存じの方も多いいと思いますが、GMが人体に害があるかはまだ誰にもわからないこと。あるかもしれないし、無いかもしれないというのが事実らしい事実なのです。
この「わからなさ」こそがGMの本当の怖さなのかもしれません。わからないから科学者などに「大丈夫だ」と言われれば「大丈夫なのかな」と思ってしまう。でも別の科学者は「危険だ」という。そして、そのどちらも後ろ盾が居て、その後ろ盾の利益のために発言しているかもしれないという別の「わからなさ」もあるのです。
この「わからなさ」を少しでも減じるという意味でこのドキュメンタリー映画には意味があることは間違いありません。
特に終盤に登場する2年間マウスで実験を行ったというセラリーニ教授の研究成果などは、それを知っているのと知らないのとでは見方が大きく変わります。それに対してモンサントなどのアグリテック企業が圧力を加えていることも明らかになります。
繰り返し訴えることの大事さ
ただこの映画を見ていると、既視感というか繰り返し言われてきたことを言っているに過ぎないという気もしてきてしまいます。
この映画は社会派のドキュメンタリーの一つの型にハマっていて、素朴な疑問から社会問題を取り上げ、取材をして知見を深め、それを共有し、最後に行動を促します。同じ色がテーマの映画なら『フード・インク』もそうだし、『キング・コーン』もそうだし、出てくる人もちょっとかぶっていたり、トピックも共通していたりして、「あー知ってる知ってる」とつい思ってしまいます。
そして、食や環境がテーマのドキュメンタリーはどれもそうですが、行き着くところは資本主義の問題で、グローバル企業の利益のために大衆が搾取されているという話になります。それに対抗するために大事なのは連帯だ、みんなで行動しよう!となります。
ただ、繰り返しだからといって切り捨ててしまってもいけません。こういう事実は繰り返し語られて、届いていない人にも届くようにし、知っている人も何度も聞くことで忘れないようにして、行動を続ける動機づけにしなければいけない。
いわばこのような映画が繰り返し生まれること自体が運動であると捉えるべきなのです。
だから「知ってるよ」と思った人にもぜひ見てほしいし、見逃している『モンサントの不自然な食べもの』も見なければいけないなぁと思いました。
https://youtu.be/xJaqUDz8IdE
『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』2013年/アメリカ/87分監督・脚本・出演:ジェレミー・セイファート
Kenji
Ishimuraishimura@cinema-today.netAdministratorライター/映画観察者。
2000年から「ヒビコレエイガ」主宰、ライターとしてgreenz.jpなどに執筆中。まとめサイト→https://note.mu/ishimurakenji
映画、アート、書籍などのレビュー記事、インタビュー記事、レポート記事が得意。ソーシネ
コメントを残す