「日本映画専門チャンネル」HPより

ソーシャルシネマと言って取り上げる映画にはドキュメンタリーが多いのですが、それは、ドキュメンタリー映画が劇映画とは異なり、市井の人々との交わりの中から生まれるものが多いことに起因します。もちろん、劇映画でもソーシャルな価値を持つ映画もあって、そういう映画も紹介していきたい(例えばまだ観てないけど『この世界の片隅に』とか)と思っているわけではありますが。

まあしかし、最近はドキュメンタリー映画にも面白い作品が多いので、ジャンルに拘らずに映画として楽しんで欲しいと思います。先日、greenz.jpで紹介した『人生フルーツ』も、ドキュメンタリーというジャンルを超えて映画として非常に面白い作品だったので、そのうちこちらでも紹介しますが、この『人生フルーツ』を制作した愛知県の地方テレビ局東海テレビ放送が制作するドキュメンタリーシリーズが、日本映画専門チャンネルで年末から1月にかけて放送されるということで、今回はそのことについてつらつらと書きたいと思います。

東海テレビのドキュメンタリーに注目したのは『人生フルーツ』が面白かったからというのもあるんですが、ただのテレビドキュメンタリーではなく劇場公開もしていて、以前、ポレポレ東中野で特集上映もやっていたりして、一部では注目されているシリーズだからです。加えて、最近では地方発の映画やテレビ番組に面白いものが多いような気がするので、その点でも興味が湧いてきたのです。

まずは、その作品ラインナップをご紹介しましょう。
・ヤクザと憲法(指定暴力団に密着取材)
・平成ジレンマ(戸塚ヨットスクール事件と戸塚校長の現在)
・神宮希林 わたしの神様(樹木希林が伊勢神宮を訪ねる)
・ふたりの死刑囚(袴田事件と名張毒ぶどう酒事件の2人の死刑囚を追う)
・青空どろぼう(四日市ぜんそくの40年)
・死刑弁護人(死刑判決を受けた重大事件の被告弁護人を追う)
・長良川ド根性(長良川河口堰問題)
・約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(無罪を訴え続けた死刑囚の半生)
・ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~(高校をドロップ・アウトした球児たちを支えるNPO)

地域は東海エリアが中心ですが、事件あるいは出来事としては全国的に知られたものが多く、タイトルだけでも興味をそそられます。

それだけでも、スカパーに入るには十分だったわけですが、これらの作品が劇場公開されていて、『人生フルーツ』が10作目というのが特に注目に値すると思うのです。というのも、地方局が制作したテレビ番組というのは基本的にその局だけで放送するためのもので、情報番組などがその最たるものです。一部、系列局の他のテレビ局に配信したり、中には全国ネットで放送されるような番組も出てきますが、基本的には非常に少ない予算で限られた視聴者に向けて作られているわけです。

東海テレビのドキュメンタリーシリーズも自局で放送するために作られたものではありますが、同時にテレビを通してではなく劇場を通して全国の視聴者(もはや観客)に届けるという新しいあり方を試みています。ここがなかなか興味深いのです。

というのも、ソーシャルシネマの意味というのは、その映画を観ることによって、観る人とそこに出てくる人との間に関係性が出来上がることにあると思うのです。そこに出てくる人やそこに映し出された出来事について考えることで、直接的ではないにしろ関係性が出来るのです。そして、その映画が広まっていくことでその関係性も広がっていくことに意味があるのです。

それで実質的に社会の何かが変わるわけではないですが、社会というのは有機的なものですから、それまでつながっていないものがつながることによって少しずつ変化していきます。そのつながりを作るものの一つがソーシャルシネマだというわけです。

そんなことを考えた上で、地方のテレビ局が(別にテレビ局でなくてもいいんですが)、その土地で作ったものが全国に広がっていくということは、それまでつながっていなかったものをつなげるという意味で、中央で作られたものよりも大きな効果があるように思えるのです。テレビでもなんでも私たちはほとんどのものについて標準とされる東京の情報や価値観を流し込まれていて、それ以外の情報というのはなかなか入ってきません。

言いすぎかもしれませんが、これは、一種の情報の「封建主義」ではないかと思うのです。映画にもテレビにもコストがかかった時代にはそれでも仕方なかったとは思います。しかし今は映画を作るにしてもテレビを作るにしてもコストは下がったし、それを世界へと発信する手段も非常に安価になりました。そうなったからには、それぞれが発信者となることで多様な情報が流通し、理解し合ったり、共感しあったり出来るような情報の「民主主義」化がなされるべきだと思うのです。

地方で作られたものが他の地方でも観られるようになるということは、そういう意味でも重要なのです。東京や国が抱える問題と、それぞれの地方が抱える問題は異なります。そして、それぞれの人が抱える問題はどこの場所でも人それぞれです。だから、別のところで同じような問題を抱えていたり、取り組んでいたりする人に出会うことに意味があると思うのです。

という感じで御託を並べてきましたが、基本的には「面白そうだからみたい!」ということです。そのうえで、色々と考えて、それが一歩進む機会になれば、それに越したことはないと思います。

そんなこんなで、スカパーで契約しまして、1月までどっぷり浸かろうということです。
ちなみに、2週間はお試しというので、ほぼ全部のチャンネルが見られ、契約した場合も最初の月は無料なので1ヶ月分の料金で1ヶ月観られるようです。
料金はスカパーの基本料金が400円くらいで、日本映画専門チャンネルが700円くらい、日本映画専門チャンネルも見られる基本パックがキャンペーン中で1980円だかでした。パックにしても2400円で2ヶ月見られるということなので、それでいいんじゃないかと思った次第です。
興味のある方はぜひお試しください。

東海テレビのドキュメンタリーシリーズをまとめた電子書籍販売中!

https://i2.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2016/12/sky_tokai.jpg?fit=640%2C359&ssl=1https://i2.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2016/12/sky_tokai.jpg?resize=150%2C150&ssl=1ishimuraBlog人生フルーツ,地方テレビ局,東海テレビ放送
ソーシャルシネマと言って取り上げる映画にはドキュメンタリーが多いのですが、それは、ドキュメンタリー映画が劇映画とは異なり、市井の人々との交わりの中から生まれるものが多いことに起因します。もちろん、劇映画でもソーシャルな価値を持つ映画もあって、そういう映画も紹介していきたい(例えばまだ観てないけど『この世界の片隅に』とか)と思っているわけではありますが。 まあしかし、最近はドキュメンタリー映画にも面白い作品が多いので、ジャンルに拘らずに映画として楽しんで欲しいと思います。先日、greenz.jpで紹介した『人生フルーツ』も、ドキュメンタリーというジャンルを超えて映画として非常に面白い作品だったので、そのうちこちらでも紹介しますが、この『人生フルーツ』を制作した愛知県の地方テレビ局東海テレビ放送が制作するドキュメンタリーシリーズが、日本映画専門チャンネルで年末から1月にかけて放送されるということで、今回はそのことについてつらつらと書きたいと思います。 東海テレビのドキュメンタリーに注目したのは『人生フルーツ』が面白かったからというのもあるんですが、ただのテレビドキュメンタリーではなく劇場公開もしていて、以前、ポレポレ東中野で特集上映もやっていたりして、一部では注目されているシリーズだからです。加えて、最近では地方発の映画やテレビ番組に面白いものが多いような気がするので、その点でも興味が湧いてきたのです。 まずは、その作品ラインナップをご紹介しましょう。 ・ヤクザと憲法(指定暴力団に密着取材) ・平成ジレンマ(戸塚ヨットスクール事件と戸塚校長の現在) ・神宮希林 わたしの神様(樹木希林が伊勢神宮を訪ねる) ・ふたりの死刑囚(袴田事件と名張毒ぶどう酒事件の2人の死刑囚を追う) ・青空どろぼう(四日市ぜんそくの40年) ・死刑弁護人(死刑判決を受けた重大事件の被告弁護人を追う) ・長良川ド根性(長良川河口堰問題) ・約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(無罪を訴え続けた死刑囚の半生) ・ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~(高校をドロップ・アウトした球児たちを支えるNPO) 地域は東海エリアが中心ですが、事件あるいは出来事としては全国的に知られたものが多く、タイトルだけでも興味をそそられます。 それだけでも、スカパーに入るには十分だったわけですが、これらの作品が劇場公開されていて、『人生フルーツ』が10作目というのが特に注目に値すると思うのです。というのも、地方局が制作したテレビ番組というのは基本的にその局だけで放送するためのもので、情報番組などがその最たるものです。一部、系列局の他のテレビ局に配信したり、中には全国ネットで放送されるような番組も出てきますが、基本的には非常に少ない予算で限られた視聴者に向けて作られているわけです。 東海テレビのドキュメンタリーシリーズも自局で放送するために作られたものではありますが、同時にテレビを通してではなく劇場を通して全国の視聴者(もはや観客)に届けるという新しいあり方を試みています。ここがなかなか興味深いのです。 というのも、ソーシャルシネマの意味というのは、その映画を観ることによって、観る人とそこに出てくる人との間に関係性が出来上がることにあると思うのです。そこに出てくる人やそこに映し出された出来事について考えることで、直接的ではないにしろ関係性が出来るのです。そして、その映画が広まっていくことでその関係性も広がっていくことに意味があるのです。 それで実質的に社会の何かが変わるわけではないですが、社会というのは有機的なものですから、それまでつながっていないものがつながることによって少しずつ変化していきます。そのつながりを作るものの一つがソーシャルシネマだというわけです。 そんなことを考えた上で、地方のテレビ局が(別にテレビ局でなくてもいいんですが)、その土地で作ったものが全国に広がっていくということは、それまでつながっていなかったものをつなげるという意味で、中央で作られたものよりも大きな効果があるように思えるのです。テレビでもなんでも私たちはほとんどのものについて標準とされる東京の情報や価値観を流し込まれていて、それ以外の情報というのはなかなか入ってきません。 言いすぎかもしれませんが、これは、一種の情報の「封建主義」ではないかと思うのです。映画にもテレビにもコストがかかった時代にはそれでも仕方なかったとは思います。しかし今は映画を作るにしてもテレビを作るにしてもコストは下がったし、それを世界へと発信する手段も非常に安価になりました。そうなったからには、それぞれが発信者となることで多様な情報が流通し、理解し合ったり、共感しあったり出来るような情報の「民主主義」化がなされるべきだと思うのです。 地方で作られたものが他の地方でも観られるようになるということは、そういう意味でも重要なのです。東京や国が抱える問題と、それぞれの地方が抱える問題は異なります。そして、それぞれの人が抱える問題はどこの場所でも人それぞれです。だから、別のところで同じような問題を抱えていたり、取り組んでいたりする人に出会うことに意味があると思うのです。 という感じで御託を並べてきましたが、基本的には「面白そうだからみたい!」ということです。そのうえで、色々と考えて、それが一歩進む機会になれば、それに越したことはないと思います。 そんなこんなで、スカパーで契約しまして、1月までどっぷり浸かろうということです。 ちなみに、2週間はお試しというので、ほぼ全部のチャンネルが見られ、契約した場合も最初の月は無料なので1ヶ月分の料金で1ヶ月観られるようです。 料金はスカパーの基本料金が400円くらいで、日本映画専門チャンネルが700円くらい、日本映画専門チャンネルも見られる基本パックがキャンペーン中で1980円だかでした。パックにしても2400円で2ヶ月見られるということなので、それでいいんじゃないかと思った次第です。 興味のある方はぜひお試しください。 東海テレビのドキュメンタリーシリーズをまとめた電子書籍販売中!
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