『プラダを着た悪魔』はコメディの皮を被った社会派映画 ― ファッションと欲望と人間と社会と
ジャーナリスト志望のアンディは有名ファッション誌“RUNWAY”の名物編集長ミランダのアシスタントの職を見つける。ファッションにまったく興味がない彼女はダサい服で面接に行くがなぜか採用される。しかし、ミランダは人を人とも
小津安二郎が『東京物語』で描いた戦後日本の家族と社会の変容を現代から見ると
日本映画の巨匠といえばまっさきに名前が上がる二人が黒澤明と小津安二郎です。その小津安二郎の代表作といえば『東京物語』、私も大好きな映画の一つです。 『東京物語』が名作と言われる理由は様々あります。小津独自のスタイルである
「滅びゆく街」を描く9時間の大長編『鉄西区』から見える、中国の人々のつながりと国家との微妙な関係
いまや中国を代表するドキュメンタリー作家の一人となった王兵(ワン・ビン)のデビュー作にして代表作の『鉄西区』。ワン・ビンは1999年から3年間に渡り中国北東部瀋陽の工業地域・鉄西区で暮らしながら映画を撮影した。1930年
又吉直樹原作の映画『劇場』は「なんのために生きるのか」を問う
画廊に飾られた作品に目を留めた男と女、男は女を誘うとするが金がなく諦めようとするが、二人は結局カフェで話をすることに。その男・永田は同級生と劇団を立ち上げた売れない劇作家、女・沙希は服飾学校に通う学生だった。 しばらくし
「男か女か」しかないことの意味は?『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき』を見てLGBTQを自分ごとにする。
子供の頃に自分の性別(女性)に違和感を覚え、赤いランドセルを拒否し、中学に入るとセーラー服を拒否し、性同一性障害の診断を得て男子生徒として通学することを認められた空雅が主人公のドキュメンタリー映画。女性からホルモン治療や
悲劇の偉大な芸術家『氷上の王、ジョン・カリー』、フィギュアと芸術とAIDSと世間と孤独
イギリス人の少年ジョン・カリーは、バレエを習いたいと思っていたが父親から反対され、スケートを習い始める。メキメキと上達した彼はフィギュアスケート選手として国際舞台に立つようになり、1976年インスブルック・オリンピックの
映画は退屈だが思想は過激、『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』が掲げる芸術による革命とは
第2次世界大戦後のドイツで活動した前衛芸術家のヨーゼフ・ボイスは思索は彫刻であるという思想をもとに、芸術で「社会を彫刻する」ことを目指した。大学の方針に背いて解雇されたり、緑の党の結党に参加するなどアーティストであると同
伝説のフラメンコダンサー『ラ・チャナ』は芸術の力で不平等を打ち破る
伝説のフラメンコダンサーと言われるラ・チャナは、14歳のときにおじのバンドに合わせて踊って才能を開花させる。映画に出演したことで人気ダンサーとなり、テレビ出演や世界ツアーなどをやるまでになるが、マネージャーの夫の反対で突
芸術家で教師『シーモアさんと、大人のための人生入門』から学べるのは人生というより哲学?
イーサン・ホークが出会った87歳のピアノ教師シーモア・バーンスタイン。彼の人柄に魅了されたイーサンは彼を主人公にしたドキュメンタリー映画を撮る。かつてはコンサートピアニストとして活躍し、今は優秀なピアノ教師として指導に当
水道民営化がもたらす地獄を描いた『ブルー・ゴールド』が教えてくれる水問題と貧困を解決するヒント
冒頭、砂漠で水無しで7日間を過ごし死亡したエピソードが流れる。水はそれだけ生物にとって欠かせないものだということだ。そして、その水がいま危機にあると指摘して物語が展開されていく。 物語の軸になるのは、水道の民営化によるグ