新型コロナウイルス“COVID-19”が世界中で猛威を奮った2020年、その2月に横浜港を出発し、アジアを回ったクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号。船内で大規模なクラスターが発生し、世界的なニュースとなった。
その船に乗っていた乗客や乗員たちが記録していた映像を元に、その時何が起こっていたのかを詳らかにしていくドキュメンタリー。
いま思えば…
主な登場人物は、アメリカ人夫婦が2組と、インドネシア人、イタリア人などの乗員が数名、それぞれがスマートフォンで記録した映像をつなぎ合わせて、時系列に沿って船内の状況が断片的にではあるがわかるようにしている。
その時も、その後もかなり報道されたので、目新しい情報というのはないけれど、今から見ると、その対応の仕方は信じられないほどずさんだし、パニックぶりも過剰にみえてしまう。
「こうしておけばよかったのに」と思わせる部分が多くあり、COVID-19というのが本当に新しい感染症だったのだということを思い出させる。
とにかく情報がない
そんな中で、強く感じたのが、これほどまでに船内で感染症が広まってしまったのは、情報があまりに少なかったからだということだ。
もちろんウイルスについてわかっていることがほとんどなかったということはあるが、ウイルスに関わる情報だけでなく、あらゆる情報が乗員や乗客に届いていなかったことが見て取れた。自分が今どういう状況にあるのかわからないと人は不安に陥ってしまう。それがパニックを引き起こし、事態を収拾しにくくしてしまうのだ。
この情報がないという状況はこのダイヤモンド・プリンセス号だけでなく、コロナ禍のなかで、あらゆる場面で目にし、耳にしたことだ。情報を持つ側が「不安を煽るから」という理由で情報を統制し、情報が届かないために人々はさらに不安に陥るという悪循環が世界中で生まれていた。
そのような状況は不幸しかうまないように思う。ダイヤモンド・プリンセス号での出来事は、その後に世界中で起きたことと比べると大きな悲劇とはいえないかもしれない。でも、今から見ると、その後に対処するためのヒントはもうそこにあったのだ。人々に情報を渡し、それぞれに判断させること。それが必要なことだったし、これからも必要なことだ。
この映画に登場する人たちの自撮り映像の不安げな顔を見て、そんな事ばかり考えた。
『ラスト・クルーズ』
The Last Cruise
2021年/アメリカ/40分
監督:ハンナ・オルソン
U-NEXTで独占配信中!
https://socine.info/2021/05/11/last-cruise/https://i1.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2021/05/last-cruise1.jpg?fit=960%2C540&ssl=1https://i1.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2021/05/last-cruise1.jpg?resize=150%2C150&ssl=1ishimuraFeaturedMovieVODドキュメンタリー,新型コロナ新型コロナウイルス“COVID-19”が世界中で猛威を奮った2020年、その2月に横浜港を出発し、アジアを回ったクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号。船内で大規模なクラスターが発生し、世界的なニュースとなった。
その船に乗っていた乗客や乗員たちが記録していた映像を元に、その時何が起こっていたのかを詳らかにしていくドキュメンタリー。
いま思えば…
主な登場人物は、アメリカ人夫婦が2組と、インドネシア人、イタリア人などの乗員が数名、それぞれがスマートフォンで記録した映像をつなぎ合わせて、時系列に沿って船内の状況が断片的にではあるがわかるようにしている。
その時も、その後もかなり報道されたので、目新しい情報というのはないけれど、今から見ると、その対応の仕方は信じられないほどずさんだし、パニックぶりも過剰にみえてしまう。
「こうしておけばよかったのに」と思わせる部分が多くあり、COVID-19というのが本当に新しい感染症だったのだということを思い出させる。
とにかく情報がない
そんな中で、強く感じたのが、これほどまでに船内で感染症が広まってしまったのは、情報があまりに少なかったからだということだ。
もちろんウイルスについてわかっていることがほとんどなかったということはあるが、ウイルスに関わる情報だけでなく、あらゆる情報が乗員や乗客に届いていなかったことが見て取れた。自分が今どういう状況にあるのかわからないと人は不安に陥ってしまう。それがパニックを引き起こし、事態を収拾しにくくしてしまうのだ。
この情報がないという状況はこのダイヤモンド・プリンセス号だけでなく、コロナ禍のなかで、あらゆる場面で目にし、耳にしたことだ。情報を持つ側が「不安を煽るから」という理由で情報を統制し、情報が届かないために人々はさらに不安に陥るという悪循環が世界中で生まれていた。
そのような状況は不幸しかうまないように思う。ダイヤモンド・プリンセス号での出来事は、その後に世界中で起きたことと比べると大きな悲劇とはいえないかもしれない。でも、今から見ると、その後に対処するためのヒントはもうそこにあったのだ。人々に情報を渡し、それぞれに判断させること。それが必要なことだったし、これからも必要なことだ。
この映画に登場する人たちの自撮り映像の不安げな顔を見て、そんな事ばかり考えた。
https://youtu.be/Epfyvgb6kJo
『ラスト・クルーズ』The Last Cruise2021年/アメリカ/40分監督:ハンナ・オルソン
U-NEXTで独占配信中!
Kenji
Ishimuraishimura@cinema-today.netAdministratorライター/映画観察者。
2000年から「ヒビコレエイガ」主宰、ライターとしてgreenz.jpなどに執筆中。まとめサイト→https://note.mu/ishimurakenji
映画、アート、書籍などのレビュー記事、インタビュー記事、レポート記事が得意。ソーシネ
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