『ツイン・ピークス』などで知られる映画監督のデヴィッド・リンチは絵画や立体作品を発表するアーティストでもある。そんなデヴィッド・リンチが映画監督/アーティストとなるまでの歩みを、自身へのインタビューによって解きほぐしていく。
デヴィッド・リンチ本人のインタビュー音声と、過去の作品や現在の制作風景の映像のみで構成された作品で、「その半生を語った」という印象の作品。
画家から映画監督へ
デヴィッド・リンチといえば『イレイザーヘッド』『エレファント・マン』などの恐怖映画と『ツイン・ピークス』の印象が強いですが、私の印象というのは凝った映像と複雑なストーリーといったものです。B級のテイストもありながら洗練された感じもあり、独特の世界観があることは間違いありません。
私は、彼が画家を志していたことも、今もアーティストとして創作活動をしていることも知らなかったので、この映画を見てなるほどと思う部分も多くありました。特に、初期の実験映画のような映像。「絵を動かしてみたらどうだろう」というようなことを言っていたと思いますが、絵画の表現を広げる形で映像に入っていったというのは、「それでこういう作風になったんだ」という納得感がありました。
ただ、この作品が映画としてどうなのかと言うと多くの人には退屈なのではないかと思います。幼少期からのエピソードが時間軸どおりに話されて、デヴィッド・リンチがどう出来上がっていったのかはわかりますが、特に強いエピソードがないというか、「これが作品に影響したんだな」と思うような劇的なエピソードが殆どないので、退屈と言えば退屈です。
悪夢と狂気の魅力
私が興味を惹かれたのは、子供の頃に完全に全裸の女の人がやってくるのに遭遇したというエピソードと、フィラデルフィアに住み始めた頃に周りがおかしな人ばかりだったというエピソードでした。そういう狂気を湛えた人たちとの遭遇がデヴィッド・リンチの悪夢的な世界観を構築していったのではないか、あるいは子供の頃は別にしてそもそもそういう狂気に惹かれていたから絵画においても映像においてもこのような表現が生まれたのではないかと思ったのです。
この映画を見て思ったのは、映像以外の彼の作品をもうちょっと良く観てみたいということ。劇中の映像でもやたらと腕の長い人物が作品に何度も登場していたり、固執するモチーフがいくつかあって、それが作り上げる世界観をもうちょっと掘り下げてみたいなという感じは覚えました。
ただ、デヴィッド・リンチの映画を見返そうとは思わなかったのが不思議なところで、この映画においては映画は彼のアートライフにおいてそれほど大きな割合を占めていないのかなと言う印象です。私たちにとってデヴィッド・リンチはまず映画監督であるのに。
そこがなんとも不思議で、私にとってのデヴィッド・リンチと映画のデヴィッド・リンチがあまりうまく結びつかず、全体として薄い印象になってしまった気はします。
でも、「ツイン・ピークス」はいつか見返したいとずっと思っているので、いつか見返します。
『デヴィッド・リンチ アートライフ』
2016年/アメリカ=デンマーク/88分
監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリビア・ネールガード=ホルム
撮影:ジェイソン・S
音楽:ジョナサン・ベンタ
出演:デヴィッド・リンチ
https://socine.info/2020/05/22/david-lynch-artlife/https://i1.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2020/05/david_lynch_sub04.jpg?fit=1024%2C624&ssl=1https://i1.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2020/05/david_lynch_sub04.jpg?resize=150%2C150&ssl=1ishimuraMovieVODアート,ドキュメンタリー©Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016
『ツイン・ピークス』などで知られる映画監督のデヴィッド・リンチは絵画や立体作品を発表するアーティストでもある。そんなデヴィッド・リンチが映画監督/アーティストとなるまでの歩みを、自身へのインタビューによって解きほぐしていく。
デヴィッド・リンチ本人のインタビュー音声と、過去の作品や現在の制作風景の映像のみで構成された作品で、「その半生を語った」という印象の作品。
画家から映画監督へ
デヴィッド・リンチといえば『イレイザーヘッド』『エレファント・マン』などの恐怖映画と『ツイン・ピークス』の印象が強いですが、私の印象というのは凝った映像と複雑なストーリーといったものです。B級のテイストもありながら洗練された感じもあり、独特の世界観があることは間違いありません。
私は、彼が画家を志していたことも、今もアーティストとして創作活動をしていることも知らなかったので、この映画を見てなるほどと思う部分も多くありました。特に、初期の実験映画のような映像。「絵を動かしてみたらどうだろう」というようなことを言っていたと思いますが、絵画の表現を広げる形で映像に入っていったというのは、「それでこういう作風になったんだ」という納得感がありました。
©Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016
ただ、この作品が映画としてどうなのかと言うと多くの人には退屈なのではないかと思います。幼少期からのエピソードが時間軸どおりに話されて、デヴィッド・リンチがどう出来上がっていったのかはわかりますが、特に強いエピソードがないというか、「これが作品に影響したんだな」と思うような劇的なエピソードが殆どないので、退屈と言えば退屈です。
悪夢と狂気の魅力
私が興味を惹かれたのは、子供の頃に完全に全裸の女の人がやってくるのに遭遇したというエピソードと、フィラデルフィアに住み始めた頃に周りがおかしな人ばかりだったというエピソードでした。そういう狂気を湛えた人たちとの遭遇がデヴィッド・リンチの悪夢的な世界観を構築していったのではないか、あるいは子供の頃は別にしてそもそもそういう狂気に惹かれていたから絵画においても映像においてもこのような表現が生まれたのではないかと思ったのです。
この映画を見て思ったのは、映像以外の彼の作品をもうちょっと良く観てみたいということ。劇中の映像でもやたらと腕の長い人物が作品に何度も登場していたり、固執するモチーフがいくつかあって、それが作り上げる世界観をもうちょっと掘り下げてみたいなという感じは覚えました。
©Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016
ただ、デヴィッド・リンチの映画を見返そうとは思わなかったのが不思議なところで、この映画においては映画は彼のアートライフにおいてそれほど大きな割合を占めていないのかなと言う印象です。私たちにとってデヴィッド・リンチはまず映画監督であるのに。
そこがなんとも不思議で、私にとってのデヴィッド・リンチと映画のデヴィッド・リンチがあまりうまく結びつかず、全体として薄い印象になってしまった気はします。
でも、「ツイン・ピークス」はいつか見返したいとずっと思っているので、いつか見返します。
https://youtu.be/bgBs2U0fzJw
『デヴィッド・リンチ アートライフ』2016年/アメリカ=デンマーク/88分監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリビア・ネールガード=ホルム撮影:ジェイソン・S音楽:ジョナサン・ベンタ出演:デヴィッド・リンチ
https://eigablog.com/vod/movie/david-lynch-artlife/
Kenji
Ishimuraishimura@cinema-today.netAdministratorライター/映画観察者。
2000年から「ヒビコレエイガ」主宰、ライターとしてgreenz.jpなどに執筆中。まとめサイト→https://note.mu/ishimurakenji
映画、アート、書籍などのレビュー記事、インタビュー記事、レポート記事が得意。ソーシネ
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