最近「持続可能な資本主義」という本を読み、その著者で鎌倉投信の新井さんという方にインタビューすることがあって、資本主義についてちょっと考えました。資本主義についてというか経済について描いた映画もいろいろあって、最近では『TOMORROW パーマネントライフを探して』なんかを紹介したり、トランプ時代を迎えるにあたって考えたことを書いたりもしました(「トランプ時代の世界に向けて、やるべきことと見るべき映画を考えてみた」)。

資本主義の問題については、金融資本主義の問題とか、行き過ぎたグローバリゼーションの問題とかいろいろあるんですが、簡単に言うと成長こそが至上命題で、そのために消費を増やしていくという経済モデルがもう立ち行かなくなっているということなんだと思います。好きなものを好きなだけ買える世の中が本当に良い世の中なのかということです。

そんなことを思っていたときに見つけたのが、この「Dead Mall Series」というYouTube上の短編ドキュメンタリーシリーズです。これは、ダン・ベルさんが、カメラを持って潰れそうなショッピングモールに行ってその風景を撮影し、80年代や90年代の栄えていた頃の映像と対比して解説をするという映像作品。長さは10分から20分で今まで40本近くアップされています。

その中の1本をとりあえずさわりだけでもご覧ください。*音声は英語のみですが、英語の字幕が出せるので、英語は全然ダメという方でなければだいたい理解できると思います。自動翻訳の日本語は全くだめです。

これはサンライズ・モールというモールが題材で、ここは85年の映画『ビリー・ジーンの伝説』の舞台になったそうで、聞いたこともない映画ですが、今もその映画に登場したままの姿だということが解説されます。それによって強調されるのはこのモールの寂れっぷり。エスカレーターは全て止まっていて、フードコートで営業している店は1店舗のみ。お客さんもほとんどおらず、まるで廃墟のようです。

この動画の中でもいわれていますが、70年代や80年代の映画は『ゾンビ』を筆頭にショッピングモールが舞台になったものが結構ありましたが、最近の映画ではあまり出てくる印象がありません。このこととこの動画シリーズが示すのは、アメリカでショッピングモールがどんどん潰れていっているということ。ネットショッピングの影響も大きいでしょうが、それだけネットショッピングにお客が移るというのも、ショッピングモールが象徴してきた大量生産大量消費の20世紀型資本主義の終焉を意味していて、それは言い換えれば画一的だった消費のあり方が多様化しているということでもあるのでしょう。

この映像作品を観ていると、それが実感としてわかります。こちらの作品はモールに入っているラジオシャックにフォーカスを当てたもの。ラジオシャックといえばアメリカ有数の家電量販店、それがこの寂れっぷり。過去の栄光という言葉が頭に浮かびます。

日本ではまだまだ郊外型のショッピングモールというのは特に地方では賑わいを見せていますが、それもどれだけ続くのか。ただ安いだけの物を集めた市場への需要がいつまで続くのか、それは資本主義のこれからの変化のあり方にかかってくるのだろうと思います。もちろん、日本のショッピングモールはアメリカの失敗例から学んでお客を引きつける場所であり続けるかもしれませんが。

しかし「商業施設」というのはどこかで「時代」を象徴するものです。百貨店の時代、スーパーの時代、コンビニの時代、ショッピングモールの時代。そんなことを思うのも、この映像シリーズで映されるモールが、商業施設としての絶望的な状況とは裏腹に建築としてはそのレトロさが魅力的であるからです。一つの時代を象徴する建築としてノスタルジーを感じさせるのです。

このシリーズに登場するモールにいる人の大半は老人だというのも、そんな思いを強くします。老人にとってはこの場所というのは自分たちの時代のものであり、居場所で有り続けているのです。

もはや時代遅れになってしまった20世紀型の資本主義はこれからどのように姿を変えていくのか、どう姿を変えるのが私たちにとって望ましいのか。そう考えると問題が大きすぎて途方にくれてしまいますが、私達はこれからどのような居場所を求めるのかというところから考えると少し身近なものとして考えられる、このシリーズが教えてくれるのはそんなことなのかもしれません。

http://socine.info/wp-content/uploads/2017/05/deadmall.jpghttp://socine.info/wp-content/uploads/2017/05/deadmall-300x300.jpgishimuraBlogShort FilmYouTube,ショッピングモール,経済,資本主義
最近「持続可能な資本主義」という本を読み、その著者で鎌倉投信の新井さんという方にインタビューすることがあって、資本主義についてちょっと考えました。資本主義についてというか経済について描いた映画もいろいろあって、最近では『TOMORROW パーマネントライフを探して』なんかを紹介したり、トランプ時代を迎えるにあたって考えたことを書いたりもしました(「トランプ時代の世界に向けて、やるべきことと見るべき映画を考えてみた」)。 資本主義の問題については、金融資本主義の問題とか、行き過ぎたグローバリゼーションの問題とかいろいろあるんですが、簡単に言うと成長こそが至上命題で、そのために消費を増やしていくという経済モデルがもう立ち行かなくなっているということなんだと思います。好きなものを好きなだけ買える世の中が本当に良い世の中なのかということです。 そんなことを思っていたときに見つけたのが、この「Dead Mall Series」というYouTube上の短編ドキュメンタリーシリーズです。これは、ダン・ベルさんが、カメラを持って潰れそうなショッピングモールに行ってその風景を撮影し、80年代や90年代の栄えていた頃の映像と対比して解説をするという映像作品。長さは10分から20分で今まで40本近くアップされています。 その中の1本をとりあえずさわりだけでもご覧ください。*音声は英語のみですが、英語の字幕が出せるので、英語は全然ダメという方でなければだいたい理解できると思います。自動翻訳の日本語は全くだめです。 これはサンライズ・モールというモールが題材で、ここは85年の映画『ビリー・ジーンの伝説』の舞台になったそうで、聞いたこともない映画ですが、今もその映画に登場したままの姿だということが解説されます。それによって強調されるのはこのモールの寂れっぷり。エスカレーターは全て止まっていて、フードコートで営業している店は1店舗のみ。お客さんもほとんどおらず、まるで廃墟のようです。 この動画の中でもいわれていますが、70年代や80年代の映画は『ゾンビ』を筆頭にショッピングモールが舞台になったものが結構ありましたが、最近の映画ではあまり出てくる印象がありません。このこととこの動画シリーズが示すのは、アメリカでショッピングモールがどんどん潰れていっているということ。ネットショッピングの影響も大きいでしょうが、それだけネットショッピングにお客が移るというのも、ショッピングモールが象徴してきた大量生産大量消費の20世紀型資本主義の終焉を意味していて、それは言い換えれば画一的だった消費のあり方が多様化しているということでもあるのでしょう。 この映像作品を観ていると、それが実感としてわかります。こちらの作品はモールに入っているラジオシャックにフォーカスを当てたもの。ラジオシャックといえばアメリカ有数の家電量販店、それがこの寂れっぷり。過去の栄光という言葉が頭に浮かびます。 日本ではまだまだ郊外型のショッピングモールというのは特に地方では賑わいを見せていますが、それもどれだけ続くのか。ただ安いだけの物を集めた市場への需要がいつまで続くのか、それは資本主義のこれからの変化のあり方にかかってくるのだろうと思います。もちろん、日本のショッピングモールはアメリカの失敗例から学んでお客を引きつける場所であり続けるかもしれませんが。 しかし「商業施設」というのはどこかで「時代」を象徴するものです。百貨店の時代、スーパーの時代、コンビニの時代、ショッピングモールの時代。そんなことを思うのも、この映像シリーズで映されるモールが、商業施設としての絶望的な状況とは裏腹に建築としてはそのレトロさが魅力的であるからです。一つの時代を象徴する建築としてノスタルジーを感じさせるのです。 このシリーズに登場するモールにいる人の大半は老人だというのも、そんな思いを強くします。老人にとってはこの場所というのは自分たちの時代のものであり、居場所で有り続けているのです。 もはや時代遅れになってしまった20世紀型の資本主義はこれからどのように姿を変えていくのか、どう姿を変えるのが私たちにとって望ましいのか。そう考えると問題が大きすぎて途方にくれてしまいますが、私達はこれからどのような居場所を求めるのかというところから考えると少し身近なものとして考えられる、このシリーズが教えてくれるのはそんなことなのかもしれません。