© 2011 National Film and Sound Archive of Australia.

東ティモールの現代史を理解する上で重要な年号は、1975年のインドネシアによる侵略、1999年の住民投票、そして2002年の独立だ。独立した今も、その前の次代の影響が影を落とす東ティモール、そこで生きる女性たちを描いた映画を2作品紹介。

東ティモールの希望はごく普通の女性の生き方にある-『ローザの旅』

『ローザの旅』はインドネシア統治時代の抵抗運動に加わり、すべてを見届けてきたローザの独立後数年を描いた物語。

ローザは7人の子どもを抱えて首都ディリに暮らす。独立により平和が訪れたかと思ったが、2006年、待遇に不満を持つ西部出身の軍人たちが反乱を起こし、戦闘が発生、外国勢力の介入で収拾されるが、一人の少佐が部下を引き連れて抵抗勢力となった。

そんな混乱を収集し、真に平和な国家になろうと歩み続ける東ティモールで、ローザは子どもたちを育てる。映画の中心はローザの暮らしだが、ずっとすぐそばに暴力がある。それが当たり前に描かれているところが恐ろしい。

この映画の感想を書くのは難しい、あらゆることが重なり合い、一体何を思えばいいのか戸惑ってしまう。一つ一つの小さな出来事にそれぞれ意味があって、それぞれを解釈していっても、解きほぐすことはできず、もやもやが残る。

例えば、ローザは長男が暴力的な遊びに興じ、悪い仲間とつるんで学校にあまり行かなくなったのをみて、山の中に暮らす厳しいおじのところに預けることにする。長男はそこで都会のディリは日常的に戦闘が起きていて、そこにいるのは怖いと心情を吐露する。彼は田舎での暮らしで心の整理をつけてディリに戻り、ちゃんとした生活を送るようになる。

これをどう受け止めていいのか。もちろん日常的に戦闘が起きるような状況がなくなるのが一番だが、そのような環境で育たざるを得ない子どもたちをどうすればいいのか。ローザは結果的に正解を選んだが、みなが田舎に頼れる親戚を持っているわけではない。

もう一つ、国連の清掃の仕事についてローザは、同僚から家があることを羨ましがられる。同僚の女性は混乱期に家を焼かれ夫も失ったのだ。とはいえローザの家も粗末なもので家族が暮らすのに十分とは決していえないものだ。それでも彼女は、どうしても困ったらうちに来るように同僚にいう。

さらにいえば彼女の仕事の日当は3ドルで、ローザは極貧の人々の中では比較的恵まれた境遇にあることがわかる。

彼女は政治のことをしっかり考えている。インドネシア統治時代から支持してきたフレティリンを引き続き支持しながら、そのフレティリンの創立者の一人だが、たもとを分かった初代大統領のシャナナ・グスマンのことも考える。国の未来のことをしっかり考え、そして投票に行く。

もしローザが東ティモールのごく普通の人の典型なのだとしたら、この国の未来は明るいはずだ。芯がしっかりしていて未来のことを考え、暴力を嫌い、考え方が違っても攻撃しない。何十年も我慢強く耐えてきた東ティモールの人々の中にはそういう人が多いのかもしれない。そうならばこの国にはきっと平和が訪れるだろう。

混乱が続く国の中で、ローザは希望に見える。

ローザや東ティモールの人たちのために、遠い国から応援の気持ちを届けたいと思う。

https://amzn.to/3y3Ofx4

『ローザの旅』
Rosa’s Journey
2008年/オーストラリア/52分
監督・撮影:ルイジ・アキスト

出産が未だ命をかけた闘いであるとは-『女たちの闘い』

『女たちの闘い』は母親と子供の命を守るために必要なことを教えるビデオ。この21世紀になっても、昔ながらの方法で出産し、命を落とす子どもが多いこと、最新の医療にかかればその死のほとんどを防げることを懇切丁寧に説明する。

当事者ではない私たちから見ると、生まれた子供の半数が死ぬという現状は信じられないし、お産を助ける年寄りが逆子だったら手に負えないというのは衝撃的。それだけ東ティモールは世界の進歩からおいていかれてしまっている。そして、進歩についていくためには考え方から変えていかなければいけない、その意味でこの映画の存在は非常に重要だ。これまでは闇雲に信じるしかなかったが、新しい知識を得ることで自分で選べるようになるのだから。

出産自体が闘いであると同時に、安全な出産を手に入れることも闘いであるという東ティモールの現実は非常に厳しい。

『女たちの闘い』
Feto nia Funu
2007年/東ティモール/47分
監督:マックス・スタール

ishimuraMovie女性問題,東ティモール
© 2011 National Film and Sound Archive of Australia. 東ティモールの現代史を理解する上で重要な年号は、1975年のインドネシアによる侵略、1999年の住民投票、そして2002年の独立だ。独立した今も、その前の次代の影響が影を落とす東ティモール、そこで生きる女性たちを描いた映画を2作品紹介。 東ティモールの希望はごく普通の女性の生き方にある-『ローザの旅』 『ローザの旅』はインドネシア統治時代の抵抗運動に加わり、すべてを見届けてきたローザの独立後数年を描いた物語。 ローザは7人の子どもを抱えて首都ディリに暮らす。独立により平和が訪れたかと思ったが、2006年、待遇に不満を持つ西部出身の軍人たちが反乱を起こし、戦闘が発生、外国勢力の介入で収拾されるが、一人の少佐が部下を引き連れて抵抗勢力となった。 そんな混乱を収集し、真に平和な国家になろうと歩み続ける東ティモールで、ローザは子どもたちを育てる。映画の中心はローザの暮らしだが、ずっとすぐそばに暴力がある。それが当たり前に描かれているところが恐ろしい。 この映画の感想を書くのは難しい、あらゆることが重なり合い、一体何を思えばいいのか戸惑ってしまう。一つ一つの小さな出来事にそれぞれ意味があって、それぞれを解釈していっても、解きほぐすことはできず、もやもやが残る。 例えば、ローザは長男が暴力的な遊びに興じ、悪い仲間とつるんで学校にあまり行かなくなったのをみて、山の中に暮らす厳しいおじのところに預けることにする。長男はそこで都会のディリは日常的に戦闘が起きていて、そこにいるのは怖いと心情を吐露する。彼は田舎での暮らしで心の整理をつけてディリに戻り、ちゃんとした生活を送るようになる。 これをどう受け止めていいのか。もちろん日常的に戦闘が起きるような状況がなくなるのが一番だが、そのような環境で育たざるを得ない子どもたちをどうすればいいのか。ローザは結果的に正解を選んだが、みなが田舎に頼れる親戚を持っているわけではない。 もう一つ、国連の清掃の仕事についてローザは、同僚から家があることを羨ましがられる。同僚の女性は混乱期に家を焼かれ夫も失ったのだ。とはいえローザの家も粗末なもので家族が暮らすのに十分とは決していえないものだ。それでも彼女は、どうしても困ったらうちに来るように同僚にいう。 さらにいえば彼女の仕事の日当は3ドルで、ローザは極貧の人々の中では比較的恵まれた境遇にあることがわかる。 彼女は政治のことをしっかり考えている。インドネシア統治時代から支持してきたフレティリンを引き続き支持しながら、そのフレティリンの創立者の一人だが、たもとを分かった初代大統領のシャナナ・グスマンのことも考える。国の未来のことをしっかり考え、そして投票に行く。 もしローザが東ティモールのごく普通の人の典型なのだとしたら、この国の未来は明るいはずだ。芯がしっかりしていて未来のことを考え、暴力を嫌い、考え方が違っても攻撃しない。何十年も我慢強く耐えてきた東ティモールの人々の中にはそういう人が多いのかもしれない。そうならばこの国にはきっと平和が訪れるだろう。 混乱が続く国の中で、ローザは希望に見える。 ローザや東ティモールの人たちのために、遠い国から応援の気持ちを届けたいと思う。 https://amzn.to/3y3Ofx4 『ローザの旅』Rosa's Journey2008年/オーストラリア/52分監督・撮影:ルイジ・アキスト 出産が未だ命をかけた闘いであるとは-『女たちの闘い』 『女たちの闘い』は母親と子供の命を守るために必要なことを教えるビデオ。この21世紀になっても、昔ながらの方法で出産し、命を落とす子どもが多いこと、最新の医療にかかればその死のほとんどを防げることを懇切丁寧に説明する。 当事者ではない私たちから見ると、生まれた子供の半数が死ぬという現状は信じられないし、お産を助ける年寄りが逆子だったら手に負えないというのは衝撃的。それだけ東ティモールは世界の進歩からおいていかれてしまっている。そして、進歩についていくためには考え方から変えていかなければいけない、その意味でこの映画の存在は非常に重要だ。これまでは闇雲に信じるしかなかったが、新しい知識を得ることで自分で選べるようになるのだから。 出産自体が闘いであると同時に、安全な出産を手に入れることも闘いであるという東ティモールの現実は非常に厳しい。 『女たちの闘い』Feto nia Funu2007年/東ティモール/47分監督:マックス・スタール
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