ナイジェリアは今や世界で最も多く映画が作られている国で、その製作本数は2000本以上とも言われます。日本ではなかなか見れないのですが、Netflixにあったので、そのうちの1本『緑・白・緑~モザイクに輝くダイヤ~』を見てみました。

内容は高校卒業を控えた3人の若者が将来に悩みながら短編映画を作るというもの。その若者は、アーティストを目指すウゾマ(ウゾー)、裕福な父親に決められた進路に不満なババ、ニューヨークで暮らす兄のもとに行きたいセグンの3人で、ウゾーの恋人のマギーもそこに加わった青春群像劇が展開される。

この映画のタイトル『緑・白・緑』はナイジェリアの国旗を示し、3人が作る短編映画もナイジェリアがテーマ、映画の中でもナイジェリアについて様々な説明がなされ、ナイジェリアのことをよく知らない人にナイジェリアのことを知ってもらおうという意図も感じられる。

その一つとして、主人公の3人がそれぞれナイジェリアを構成する3つの主要部族の出身で、ウゾーがイボ人、ババがハウサ人、セグンがヨルバ人。冒頭からババの父親がイボ人は店子にしないと言ったり、ウゾーの兄はハウサ人の絵なんか描くなと言ったり民族間で根深い差別意識のようなものがあることが見て取れる。

この差別意識は、映画の中でも紹介されるナイジェリアの歴史と深く関係していて、直近でも1999年までクーデターが繰り返される内戦状態で民族間対立が激しかったことがうかがい知れる。

そして、ウゾーは仮定の話として「来週内戦が始まって敵同士になったらどうするか」という問いを投げかけていて、隣人同士が殺し合う可能性がゼロではないことを示唆する。

ナイジェリアの人たちはそのような背景を抱えながらも、未来に向かって進もうとしている、この映画が描こうとしているのはそのことだ。だから大人が抱えるわだかまりを持たない若者を主人公にし、モザイク状ではあるけれど平和な未来を希求しようとしている。

そして、そのための要素として映画を含めたアートの重要性も描こうとしていると感じられる。

まずウゾーが絵描きを目指していることの意味を考えると、ウゾーは両親を亡くし兄と二人暮らし、ババのように親のお金で進学をすることはできない。しかし絵が認められれば成功を手にすることができる。それはが意味するのはアートは機会の平等を保証しているということだ。

そして、セグンの母親はノリウッド映画が大好きという設定で、ナイジェリアの人たちに映画という文化が根づいていることを示す。その中で3人は映画作りをし、ババは映画プロデューサーになる夢を語る。このことは、映画がナイジェリア人にとって重要なものでありかつ夢を見させてものであることを示すと同時に、ナイジェリアという国にとっても未来の可能性を意味すると言えるだろう。

この映画は世界に向けて、映画がナイジェリアの未来を切り開く可能性があることを示し、同時にナイジェリア映画の可能性も示そうとしているのではないか。見終わるとなんだか他のノリウッド映画も見てみたくなった。数が多すぎてどれが面白いか判断が付きにくそうだけれど。

ちなみに、Netflixで見られるノリウッド映画はこちら。

『緑・白・緑 ~モザイクに輝くダイヤ~ 』
2016年/ナイジェリア/102分
監督・脚本:アバ・T・マカマ
脚本:アフリカ・ウコウ
撮影:セグン・オラディメジ
出演:イフェアニ・ディケ・Jr、ジャマル・イブラヒム、サミュエル・アビオラ・ロビンソン、クリスタベル・ゴディ

https://i2.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2019/10/greenwhitegreen-1.jpg?fit=1024%2C576&ssl=1https://i2.wp.com/socine.info/wp-content/uploads/2019/10/greenwhitegreen-1.jpg?resize=150%2C150&ssl=1ishimuraMovieVODNetflix,アフリカ,ノリウッド,青春映画
ナイジェリアは今や世界で最も多く映画が作られている国で、その製作本数は2000本以上とも言われます。日本ではなかなか見れないのですが、Netflixにあったので、そのうちの1本『緑・白・緑~モザイクに輝くダイヤ~』を見てみました。 内容は高校卒業を控えた3人の若者が将来に悩みながら短編映画を作るというもの。その若者は、アーティストを目指すウゾマ(ウゾー)、裕福な父親に決められた進路に不満なババ、ニューヨークで暮らす兄のもとに行きたいセグンの3人で、ウゾーの恋人のマギーもそこに加わった青春群像劇が展開される。 この映画のタイトル『緑・白・緑』はナイジェリアの国旗を示し、3人が作る短編映画もナイジェリアがテーマ、映画の中でもナイジェリアについて様々な説明がなされ、ナイジェリアのことをよく知らない人にナイジェリアのことを知ってもらおうという意図も感じられる。 その一つとして、主人公の3人がそれぞれナイジェリアを構成する3つの主要部族の出身で、ウゾーがイボ人、ババがハウサ人、セグンがヨルバ人。冒頭からババの父親がイボ人は店子にしないと言ったり、ウゾーの兄はハウサ人の絵なんか描くなと言ったり民族間で根深い差別意識のようなものがあることが見て取れる。 この差別意識は、映画の中でも紹介されるナイジェリアの歴史と深く関係していて、直近でも1999年までクーデターが繰り返される内戦状態で民族間対立が激しかったことがうかがい知れる。 そして、ウゾーは仮定の話として「来週内戦が始まって敵同士になったらどうするか」という問いを投げかけていて、隣人同士が殺し合う可能性がゼロではないことを示唆する。 https://youtu.be/wJ_Eizv2JUY ナイジェリアの人たちはそのような背景を抱えながらも、未来に向かって進もうとしている、この映画が描こうとしているのはそのことだ。だから大人が抱えるわだかまりを持たない若者を主人公にし、モザイク状ではあるけれど平和な未来を希求しようとしている。 そして、そのための要素として映画を含めたアートの重要性も描こうとしていると感じられる。 まずウゾーが絵描きを目指していることの意味を考えると、ウゾーは両親を亡くし兄と二人暮らし、ババのように親のお金で進学をすることはできない。しかし絵が認められれば成功を手にすることができる。それはが意味するのはアートは機会の平等を保証しているということだ。 そして、セグンの母親はノリウッド映画が大好きという設定で、ナイジェリアの人たちに映画という文化が根づいていることを示す。その中で3人は映画作りをし、ババは映画プロデューサーになる夢を語る。このことは、映画がナイジェリア人にとって重要なものでありかつ夢を見させてものであることを示すと同時に、ナイジェリアという国にとっても未来の可能性を意味すると言えるだろう。 この映画は世界に向けて、映画がナイジェリアの未来を切り開く可能性があることを示し、同時にナイジェリア映画の可能性も示そうとしているのではないか。見終わるとなんだか他のノリウッド映画も見てみたくなった。数が多すぎてどれが面白いか判断が付きにくそうだけれど。 ちなみに、Netflixで見られるノリウッド映画はこちら。 http://socine.info/2019/10/24/nnetflix-nollywood/ 『緑・白・緑 ~モザイクに輝くダイヤ~ 』2016年/ナイジェリア/102分監督・脚本:アバ・T・マカマ脚本:アフリカ・ウコウ撮影:セグン・オラディメジ出演:イフェアニ・ディケ・Jr、ジャマル・イブラヒム、サミュエル・アビオラ・ロビンソン、クリスタベル・ゴディ
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