畜産が地球環境を破壊することから完全菜食主義(ビーガン)を勧めたドキュメンタリー映画『Cowspiracy:サステナビリティ(持続可能性)の秘密』、完全に賛同はできないにしても、地球の危機を救うための考え方の一つとして知るべきことを教えてくれた作品でした。

その作品を作った キップ・アンデルセンとキーガン・クーンのコンビが続編として制作したのが『健康って何?』です。こちらは動物性の食品を取ることがいかに体に悪いかをアピールする映画。最終的には前作と同じくビーガンを勧めます。

映画としては前作とほぼ同じであまり書くことはないのですが、加工肉の発がん性を出発点に、肉や乳製品が健康に及ぼす悪影響を次々と上げていくという展開です。それは事実なのかもしれませんが、とにかく関係者のインタビューが続き、観るものの恐怖を煽るような言葉が並べられるので、嫌気が差してしまいます。恐怖によって人をコントロールしようという姿勢は、彼らが批判しているもののはずなのに、同じことを映画でやってしまっているのは残念でなりません。

前作でもそうでしたが、私が違和感をおぼえるのは、彼らが自分たちが批判している人たちと同じ態度をとっていることです。自分たちに都合の良いデータだけを持ち出し、人々に疑念を植え付け、味方に引き入れようとしているのです。もちろん、彼らは反証を示しているので、自分たちが正しいことを証明する必要はありません。でも、あまり誠実さは感じられません。どちらも信用できないと私は思ってしまうのです。

なので前半は少し流し気味に見てしまい、詳しい内容は印象に残らかなったのですが、後半というか終盤になると、ビーガンによって病気が改善したり、より健康になったりした人たちのインタビューが続いて、そこは幸せな気分で見ることができました。それを見ていると、ビーガンを試してみてもいいかなと思ったので、ポジティブな描写のほうが人の共感を得やすいとも思いました。

人はなぜ肉を食べるのか

そんなことを思いながら、私がずっと疑問をいだいていたのは「人はなぜ肉を食べるのか」ということです。この映画は肉や乳製品の害を上げ、ヒトはそもそも雑食性ではないといい、肉を食べるなと言います。

では、なぜ人は肉を食べるのでしょうか。

ヒントは映画の中にありました。チーズについて批判する場面で、チーズを食べるとモルヒネのような快楽物質が生成されると言及しています。人は動物性の食品を食べると幸せになるのです。

この映画を見てビーガンもいいかなと思ったりもするのですが、彼らはビーガンでも栄養は十分だとか健康になるという話をするばかりで、それで幸せになれるのかどうかは言いません。彼らは健康で長生きであれば幸せだと考えているのでしょうか。肉を食べ、酒を飲む快楽は幸福には必要ないのでしょうか。

ヒトは雑食性ではないといいますが、人類は旧石器時代から動物を食べてきました。日本でも縄文人は海では魚や貝を捕り、山ではウサギからクマまで様々な動物を捕らえて食べていました。それはなぜなのか。

一つは動物のほうが栄養を手っ取り早く取れたという理由もあると思います。植物性の食料を手に入れづらいエスキモーは生肉を食べて必要な栄養素を摂取すると言います。同様に動物を捕らえたほうが植物を集めるより容易だという局面もあったのだろうと思います。

そして、やはり肉を食べる快楽もあったのではないでしょうか。想像でしかありませんが、大きな獲物を皆で食べることは祭りと結びつき、その快楽は共同体で共有された、そんなふうに思います。人類は太古から肉から快楽を得ていたのです。

肉食という快楽と文化

肉を食べるかどうかは、健康の問題であり、環境の問題であり、経済の問題でもあるわけですが、文化の問題でもあります。ビーガンという選択肢は、健康や環境を優先し、文化は退けようという考え方です。私は肉食の快楽という文化をこれからも実践していくだろうと思います。

それでも、この映画を見るとビーガンをたとえば一週間とか試してもいいかなという気分にはなります。デトックスのため、あるいは彼らの選択を体感するために。

それもやはり最後のビーガンの人たちの幸せそうな顔が私にそう思わせるのであり、映画の背景となっている思想には賛同しかねます。それでも、そんな彼らの思想に触れなければ、どうして肉を食べるのかということを考えることもなかったし、肉食を文化と考えることもなかったので、映画を見てよかったとは思います。

よりよい未来のためには、色々な考え方を吸収して、その中から自分なりの思想を見出していかなければいけない、そんなことを考えました。

『健康って何?』
2017年/アメリカ/97分
監督:キップ・アンデルセン、キーガン・クーン
脚本:キップ・アンデルセン、キーガン・クーン
撮影:キーガン・クーン
出演:キップ・アンデルセン

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畜産が地球環境を破壊することから完全菜食主義(ビーガン)を勧めたドキュメンタリー映画『Cowspiracy:サステナビリティ(持続可能性)の秘密』、完全に賛同はできないにしても、地球の危機を救うための考え方の一つとして知るべきことを教えてくれた作品でした。 その作品を作った キップ・アンデルセンとキーガン・クーンのコンビが続編として制作したのが『健康って何?』です。こちらは動物性の食品を取ることがいかに体に悪いかをアピールする映画。最終的には前作と同じくビーガンを勧めます。 映画としては前作とほぼ同じであまり書くことはないのですが、加工肉の発がん性を出発点に、肉や乳製品が健康に及ぼす悪影響を次々と上げていくという展開です。それは事実なのかもしれませんが、とにかく関係者のインタビューが続き、観るものの恐怖を煽るような言葉が並べられるので、嫌気が差してしまいます。恐怖によって人をコントロールしようという姿勢は、彼らが批判しているもののはずなのに、同じことを映画でやってしまっているのは残念でなりません。 前作でもそうでしたが、私が違和感をおぼえるのは、彼らが自分たちが批判している人たちと同じ態度をとっていることです。自分たちに都合の良いデータだけを持ち出し、人々に疑念を植え付け、味方に引き入れようとしているのです。もちろん、彼らは反証を示しているので、自分たちが正しいことを証明する必要はありません。でも、あまり誠実さは感じられません。どちらも信用できないと私は思ってしまうのです。 なので前半は少し流し気味に見てしまい、詳しい内容は印象に残らかなったのですが、後半というか終盤になると、ビーガンによって病気が改善したり、より健康になったりした人たちのインタビューが続いて、そこは幸せな気分で見ることができました。それを見ていると、ビーガンを試してみてもいいかなと思ったので、ポジティブな描写のほうが人の共感を得やすいとも思いました。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || ).push({});
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