私はもう20年近くもウェブ上に文章を書いてきて、その数は数えられないほどです。自分のサイトにまとまっているものもあれば、あちこちのサイトに掲載されているものもあり、その中には署名があるものもあればないものもある。そもそも自分が書いたことすら忘れているものもあるのです。インターネットが普及してかなりの時間が経っていますから、そんな人は意外と多いのかも知れません。

その散逸していく文章をどうにかしようと考えたことは特になかったのですが、書くということについて省みた時、そもそもそんなことをしている理由は、小さな物語を紡ぐことが重要だと考えているからだと思ったのです。これまで文章を書き続けてきた理由もそこにあるのだと。

それに続けて、(仕事として記事を書くのではなく)ここでBlogを書くことに意味などについても考えて書いたわけですが、その結果は、Blogとは信頼を獲得する場所であり、その信頼を資本にするためには電子書籍を作ってみたらいいんじゃないかと考えたのです。

Blogはお金じゃなくて信頼を稼ぐ場所。ー「Blogのそもそも」その3

というわけで電子書籍を作ることにしましたが、今書いたようにこれまで膨大な文章をインターネットの虚空に放りなげてきて、本にまとめる材料はそれこそ無数にあるわけです。その中から何をまとめればいいのか、まずはそれを考えなければいけないのですが、実は特に考えることもなく去年ハマってた東海テレビのドキュメンタリーをまとめることにしました。その理由は、このBlogで最もよく読まれている記事はダントツで『ホームレス理事長』なので、まあそれを含んだものを出したいというのが一番でした。

この段階では、電子書籍を出してみることが第一でその先のことはよく考えていなかったのです。作ってみて結局そういうことを考えることになったのですが、まずはどうやって電子書籍を作ったのかについてまとめたいと思います。

電子書籍ってどうやって作るのか調べる

ここからは”ハウツー”的な話なので、自分で電子書籍を作ろうという人以外には面白くない話かもしれませんが、自分が作るに当たって、こういう情報をまとめてくれている人がいて助かったので、自分もそんな人の助けに少しでもなればと思って書いておきます。自分の備忘録でもあります。

まず、電子書籍ってどうやって作るのか皆目検討もつかなかったので、そこから調べることにしました。ちょっとググると出てくるのはKDP(Kindle Direct Publishing)というもの。これはアマゾンがやっている自主出版プラットフォームで、Kindle本を全世界で販売できます。新しいことをやる場合は、デファクトスタンダードになりそうなものを利用したほうがいいということを今までの経験で学びましたので、とりあえずこれにしようとさらに調べてみると、KDPセレクトに登録してアマゾンの独占販売を了承すれば印税が70%になるということもわかりました。

KDPセレクトというのは、電子書籍についての独占販売権をアマゾンに付与する代わりに、月額読み放題のKindle Unlimitedなどにも登録され、そちらで読まれた場合もロイヤリティが分配されるという仕組みです。販売価格は自分で設定できますが、このロイヤリティがいくらになるかは毎月変動するということなので、どうなるのかとりあえず実験的に一冊作ってみてどうなるか見てみようと思ったのです。

Photo by Nemichandra Hombannavar on Unsplash

電子書籍を作るのは意外と簡単

で、実際作ってみると簡単で、手順としては、登録して(税務情報に関するインタビューというのが少しめんどくさい)、詳細情報を入力して、原稿と表紙をアップロードして、価格を決めるだけです。原稿はワード、表紙はJPEGでOKなので特殊な技術やソフトはなにも必要ありません。電子書籍の特性としてデバイスによって表示のされ方が違うというのがありますが、プレビューツールも用意されているので、適宜原稿を調整すればよく、Q&Aもかなり親切なのでよく見ればやり方も分かります(結局、電子書籍を作ろうという人の役にもたちませんが、ちょっとググれば誰でもできるよということをお伝えしておきます)。

作り方自体は簡単なのですが、作る上で悩んだことがひとつだけありました。それは表紙のデザインです。

私はいかんせんデザインセンスがないので、自分でデザインを決めること自体に自信がないわけですが、それでも人に頼む程のことでもないし自分でやらなきゃいけないなあということで、良さそうなのをパクろうとアマゾンをサーフィンしてました。その結果、電子書籍プロバーなものの多くは写真の上に文字をレイアウトしたものか、毒々しいフォントでタイトルを目立たせようとしたものが多いという印象でした。

写真に文字をレイアウトしたものは見栄えがいいのですが、取り上げた作品のスチルなどは著作権などの関係上使えないので、関係ない写真を使うことになり、それってあんまりおもしろくないなと思ったわけです。

そこで、電子書籍と紙の両方で出ている本を見てみると、複数並んだ時に新書の表紙のデザインって美しいなと思ってしまったのです。(次のようなデザインです。タイトルは気にしないでください。)

しかし、こういうシンプルなデザインこそセンスが必要なわけで、二の足を踏むのですが、まあ実験だしやってみっかということで、こんなデザインになりました。自分で見ても目を引くデザインとは思えませんが、まあ可もなく不可もないくらいにはなったんじゃないかと思うのです。でもやっぱり表紙のデザインって重要で、本格的にやるならプロに頼んだほうがいいなぁとも思いました。

さて、デザイン自体はこんなものなんですが、話はここからで、表紙のデザインをする上で新書としての名前(KDP上ではシリーズ名という)を決めなきゃいけないことがわかったのです。岩波新書とか、講談社現代新書とか、同時代ライブラリーとか、そういうやつです。さて何にしようかと考え始めたら、自分は電子書籍を出版することで一体何を実現しようとしているのだろうかと疑問が湧いてきたのです。

書籍におけるレーベルとはなにか

レーベル名について考えて、最終的につけたのは「ソーシャルシネマ観察叢書」でした。「ソーシャルシネマ」は扱う対象、「観察」は書く上での姿勢、「叢書」は出版の形態です。

今回はこのソーシネというブログで扱ったソーシャルシネマのシリーズについての本なので、レーベル名としてもソーシャルシネマを対象としたブログをまとめたものとなります。ブログというのは私にとっては観察の結果で、「まとめたもの」をかっこよく言ったのが叢書というわけです。

でも、自分は本当にソーシャルシネマについての電子書籍を今後も作るのだろうか?このレーベル名をつけながら、そんな事を考えました。

というのも、今回まとめた東海テレビのドキュメンタリーはもともとシリーズで記事としてもまとまった本数があったので、ほとんど何も考えずに出すことができました。本としてまとめるためのコンセプトがすでにそこにあったのです。しかし、今後同じように本を出すとした時にそんな都合の良い作品群がどれくらいあるでしょうか。ソーシャルシネマを対象とするからには、複数の作品が同じソーシャルの課題を考える材料になることが本を編む条件になります。なるべきです。しかし、その課題とそれに見合った記事を見つけることはかなり難しそうです。

それでもある種のテーマが必要だと考えるのは、そもそもブログをそのように読んでほしいという気持ちがあるからです。

ブログ記事は検索でヒットして読みに来る人が多い媒体です。でも、せっかく読みに来てくれたなら他の記事も読んで、検索をする理由になった興味関心について深く考えて欲しいと思うのです。文章を読むことは読み手が小さな物語を編むことだと私は思っていますが、一つの入り口から別の記事へと流れていくことで、読者はまた別の物語を編むことができます。そして、その物語は一つの記事だけでは生まれない深みを持つと思うのです。

しかし、今のウェブ上のコンテンツの構造やインターフェイスでは、そのように深めていくことがやりにくいのです。私自身、ブログやウェブメディアで面白い記事を読んだ時に、そこで感じたことについてさらに深掘りするために他にも記事を読みたいと思っても、どれを読んだいいのかよくわからないという経験がよくあります。それをうまく導けないだろうかとずっと考えていました。

電子書籍を作ってみて思ったのは、これは私自身が読者にたどって欲しい道筋を示すことなのだということでした。どの作品を選ぶか、そしてそれをどう並べるか、並べた上で文脈をつなげるためにどこを編集するか、そんなことを考えるのはこの本を一つの物語にしようという意思がそこにあるからです。

本当は、その道は読者自身に見つけてほしいのですが、それが難しいなら次善の策として自分で示すしかない、それが私が電子書籍を作った本当の理由だったかも知れないと思ったのです。

それは、これまで編んできた小さな物語を集めて改めて新しい小さな物語を編もうということでもあります。そして、レーベル名を考えながら思ったのは、このレーベルというのは、その新しい小さな物語を集めた箱だということです。そこにたくさんの物語を集めることができれば、読者はそこからいくつかの物語を選び出して、その人自身の物語を編むことができる、そのための材料を集めた箱なのです。

なので、ウェブ上のコンテンツではできなかったことを実現するためにも、もっと電子書籍を作っていかなければいけないと思ったのでした。

Photo by Clem Onojeghuo on Unsplash

ちなみに、本は全然売れていないので、ぜひお買い求めください。
プライム会員でkindle端末を持っている方は月1冊無料で読めるオーナーズライブラリーでもご利用いただけます。

http://socine.info/wp-content/uploads/2018/05/blog_ebook1.jpghttp://socine.info/wp-content/uploads/2018/05/blog_ebook1-300x300.jpgishimuraBlogFeaturedBlog,小さな物語,東海テレビ放送,電子書籍
私はもう20年近くもウェブ上に文章を書いてきて、その数は数えられないほどです。自分のサイトにまとまっているものもあれば、あちこちのサイトに掲載されているものもあり、その中には署名があるものもあればないものもある。そもそも自分が書いたことすら忘れているものもあるのです。インターネットが普及してかなりの時間が経っていますから、そんな人は意外と多いのかも知れません。 その散逸していく文章をどうにかしようと考えたことは特になかったのですが、書くということについて省みた時、そもそもそんなことをしている理由は、小さな物語を紡ぐことが重要だと考えているからだと思ったのです。これまで文章を書き続けてきた理由もそこにあるのだと。 それに続けて、(仕事として記事を書くのではなく)ここでBlogを書くことに意味などについても考えて書いたわけですが、その結果は、Blogとは信頼を獲得する場所であり、その信頼を資本にするためには電子書籍を作ってみたらいいんじゃないかと考えたのです。 http://socine.info/2018/02/11/why3/ というわけで電子書籍を作ることにしましたが、今書いたようにこれまで膨大な文章をインターネットの虚空に放りなげてきて、本にまとめる材料はそれこそ無数にあるわけです。その中から何をまとめればいいのか、まずはそれを考えなければいけないのですが、実は特に考えることもなく去年ハマってた東海テレビのドキュメンタリーをまとめることにしました。その理由は、このBlogで最もよく読まれている記事はダントツで『ホームレス理事長』なので、まあそれを含んだものを出したいというのが一番でした。 この段階では、電子書籍を出してみることが第一でその先のことはよく考えていなかったのです。作ってみて結局そういうことを考えることになったのですが、まずはどうやって電子書籍を作ったのかについてまとめたいと思います。 電子書籍ってどうやって作るのか調べる ここからは”ハウツー”的な話なので、自分で電子書籍を作ろうという人以外には面白くない話かもしれませんが、自分が作るに当たって、こういう情報をまとめてくれている人がいて助かったので、自分もそんな人の助けに少しでもなればと思って書いておきます。自分の備忘録でもあります。 まず、電子書籍ってどうやって作るのか皆目検討もつかなかったので、そこから調べることにしました。ちょっとググると出てくるのはKDP(Kindle Direct Publishing)というもの。これはアマゾンがやっている自主出版プラットフォームで、Kindle本を全世界で販売できます。新しいことをやる場合は、デファクトスタンダードになりそうなものを利用したほうがいいということを今までの経験で学びましたので、とりあえずこれにしようとさらに調べてみると、KDPセレクトに登録してアマゾンの独占販売を了承すれば印税が70%になるということもわかりました。 KDPセレクトというのは、電子書籍についての独占販売権をアマゾンに付与する代わりに、月額読み放題のKindle Unlimitedなどにも登録され、そちらで読まれた場合もロイヤリティが分配されるという仕組みです。販売価格は自分で設定できますが、このロイヤリティがいくらになるかは毎月変動するということなので、どうなるのかとりあえず実験的に一冊作ってみてどうなるか見てみようと思ったのです。 電子書籍を作るのは意外と簡単 で、実際作ってみると簡単で、手順としては、登録して(税務情報に関するインタビューというのが少しめんどくさい)、詳細情報を入力して、原稿と表紙をアップロードして、価格を決めるだけです。原稿はワード、表紙はJPEGでOKなので特殊な技術やソフトはなにも必要ありません。電子書籍の特性としてデバイスによって表示のされ方が違うというのがありますが、プレビューツールも用意されているので、適宜原稿を調整すればよく、Q&Aもかなり親切なのでよく見ればやり方も分かります(結局、電子書籍を作ろうという人の役にもたちませんが、ちょっとググれば誰でもできるよということをお伝えしておきます)。 作り方自体は簡単なのですが、作る上で悩んだことがひとつだけありました。それは表紙のデザインです。 私はいかんせんデザインセンスがないので、自分でデザインを決めること自体に自信がないわけですが、それでも人に頼む程のことでもないし自分でやらなきゃいけないなあということで、良さそうなのをパクろうとアマゾンをサーフィンしてました。その結果、電子書籍プロバーなものの多くは写真の上に文字をレイアウトしたものか、毒々しいフォントでタイトルを目立たせようとしたものが多いという印象でした。 写真に文字をレイアウトしたものは見栄えがいいのですが、取り上げた作品のスチルなどは著作権などの関係上使えないので、関係ない写真を使うことになり、それってあんまりおもしろくないなと思ったわけです。 そこで、電子書籍と紙の両方で出ている本を見てみると、複数並んだ時に新書の表紙のデザインって美しいなと思ってしまったのです。(次のようなデザインです。タイトルは気にしないでください。) しかし、こういうシンプルなデザインこそセンスが必要なわけで、二の足を踏むのですが、まあ実験だしやってみっかということで、こんなデザインになりました。自分で見ても目を引くデザインとは思えませんが、まあ可もなく不可もないくらいにはなったんじゃないかと思うのです。でもやっぱり表紙のデザインって重要で、本格的にやるならプロに頼んだほうがいいなぁとも思いました。 さて、デザイン自体はこんなものなんですが、話はここからで、表紙のデザインをする上で新書としての名前(KDP上ではシリーズ名という)を決めなきゃいけないことがわかったのです。岩波新書とか、講談社現代新書とか、同時代ライブラリーとか、そういうやつです。さて何にしようかと考え始めたら、自分は電子書籍を出版することで一体何を実現しようとしているのだろうかと疑問が湧いてきたのです。 書籍におけるレーベルとはなにか レーベル名について考えて、最終的につけたのは「ソーシャルシネマ観察叢書」でした。「ソーシャルシネマ」は扱う対象、「観察」は書く上での姿勢、「叢書」は出版の形態です。 今回はこのソーシネというブログで扱ったソーシャルシネマのシリーズについての本なので、レーベル名としてもソーシャルシネマを対象としたブログをまとめたものとなります。ブログというのは私にとっては観察の結果で、「まとめたもの」をかっこよく言ったのが叢書というわけです。 でも、自分は本当にソーシャルシネマについての電子書籍を今後も作るのだろうか?このレーベル名をつけながら、そんな事を考えました。 というのも、今回まとめた東海テレビのドキュメンタリーはもともとシリーズで記事としてもまとまった本数があったので、ほとんど何も考えずに出すことができました。本としてまとめるためのコンセプトがすでにそこにあったのです。しかし、今後同じように本を出すとした時にそんな都合の良い作品群がどれくらいあるでしょうか。ソーシャルシネマを対象とするからには、複数の作品が同じソーシャルの課題を考える材料になることが本を編む条件になります。なるべきです。しかし、その課題とそれに見合った記事を見つけることはかなり難しそうです。 それでもある種のテーマが必要だと考えるのは、そもそもブログをそのように読んでほしいという気持ちがあるからです。 ブログ記事は検索でヒットして読みに来る人が多い媒体です。でも、せっかく読みに来てくれたなら他の記事も読んで、検索をする理由になった興味関心について深く考えて欲しいと思うのです。文章を読むことは読み手が小さな物語を編むことだと私は思っていますが、一つの入り口から別の記事へと流れていくことで、読者はまた別の物語を編むことができます。そして、その物語は一つの記事だけでは生まれない深みを持つと思うのです。 しかし、今のウェブ上のコンテンツの構造やインターフェイスでは、そのように深めていくことがやりにくいのです。私自身、ブログやウェブメディアで面白い記事を読んだ時に、そこで感じたことについてさらに深掘りするために他にも記事を読みたいと思っても、どれを読んだいいのかよくわからないという経験がよくあります。それをうまく導けないだろうかとずっと考えていました。 電子書籍を作ってみて思ったのは、これは私自身が読者にたどって欲しい道筋を示すことなのだということでした。どの作品を選ぶか、そしてそれをどう並べるか、並べた上で文脈をつなげるためにどこを編集するか、そんなことを考えるのはこの本を一つの物語にしようという意思がそこにあるからです。 本当は、その道は読者自身に見つけてほしいのですが、それが難しいなら次善の策として自分で示すしかない、それが私が電子書籍を作った本当の理由だったかも知れないと思ったのです。 それは、これまで編んできた小さな物語を集めて改めて新しい小さな物語を編もうということでもあります。そして、レーベル名を考えながら思ったのは、このレーベルというのは、その新しい小さな物語を集めた箱だということです。そこにたくさんの物語を集めることができれば、読者はそこからいくつかの物語を選び出して、その人自身の物語を編むことができる、そのための材料を集めた箱なのです。 なので、ウェブ上のコンテンツではできなかったことを実現するためにも、もっと電子書籍を作っていかなければいけないと思ったのでした。 ちなみに、本は全然売れていないので、ぜひお買い求めください。 プライム会員でkindle端末を持っている方は月1冊無料で読めるオーナーズライブラリーでもご利用いただけます。
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