『ハーフライフ・イン・フクシマ』(スイス、フランス/監督:Francesca SCALISI, Mark OLEXA)

3月3日から5日にかけて、日比谷図書文化館で「第4回 グリーンイメージ国際環境映像祭」が開催される。

同映像祭は、環境についての映像作品を世界から公募し、優秀作品を選定、上映するもので今年で4回目。環境に関するものであれば長さやジャンルは問わず、過去には短編アニメーションなども選出されている。

今回は、48の国と地域から応募された194作品の中から15作品を選定し上映する。

「フクシマ」の今

中でも注目されるのが、福島第一原発事故で全域が避難指示区域となっている福島県富岡町で暮らす松村直登さんを主人公にしたドキュメンタリー2作品『ナオトひとりっきり』と『ハーフライフ・イン・フクシマ』。

『ナオトひとりっきり』は劇場公開もされた2015年制作の長編ドキュメンタリー映画で、ナオトさんがなぜ富岡町で暮らすようになったのか、そしてそこに今どのような暮らしがあるのかを中村真夕監督が追った作品。『ハーフライフ・イン・フクシマ』は、イタリア人とスイス人の2人の監督が『ナオトひとりっきり』後のナオトさんを取材し、2016年に発表した60分のドキュメンタリー作品。

この2つの作品から思い起こされるのは、チェルノブイリ原発事故後、立入禁止となったプリピャチに戻り生活をする人々の姿を描いたドキュメンタリー映画『プリピャチ』だ。原発事故によって無人になった土地に住む人々を描いたという共通点があるのだから当たり前だが、生活があるのに現実感がないという部分も共通しているように思える。

ただ、富岡町とプリピャチの違いは、富岡町は住民が戻れるように除染が行われているという点だ。『ハーフライフ・イン・フクシマ』には実際にナオトさんの家を除染する作業員の姿も捉えられているのだが、富岡町の「復興」に対するナオトさんの言葉は悲観的で、果たしてこの除染にほんとうに意味があるのか疑問符がつく。

福島と日本の今とこれからについて考える材料としては非常にいい作品だ。

世界の環境の今

日本を舞台にした作品が多い一方で、世界の環境の今を映し出した作品も多く紹介している。

その中の1本『ロングイェールビーン 極北の街』は、ノルウェー唯一の炭鉱を抱える北極圏の街ロングイェルビーンを舞台にしたもので、炭鉱を維持することで雇用を維持することを主張する人たちと、自然エネルギーに転換し持続可能な街をつくろうとする人たちの間で揺れる街を描いている。

『ロングイェールビーン 極北の街(仮題)』(フランス/監督:Manuel DEILLER)

この環境と経済の綱引きには、いま世界中のあらゆる場所で問題になっていることで、中国の農村人口の異動が世界にもたらす影響について描いた『エコポリス』なども同様のテーマに係る作品だ。世界規模のもので言えば、経済活動によって生じたマイクロプラスチックによる環境汚染の問題を追求した『海-消えたプラスチックの謎』もそうだといえる。

「環境」というのはつまり、人間を取り巻く自然環境のことであり、人間の活動が自然活動にどのような影響をあたえるのかについて考えることが「環境」について考えることにつながる。この映像祭で、様々な環境について改めて考えてみてはいかがだろうか?

第4回グリーンイメージ国際環境映像祭

 

【日程】
2017年3月3日(金)11:45 – 21:45
2017年3月4日(土)11:00 – 18:50
2017年3月5日(日)11:00 – 16:45
【会場】
日比谷図書文化館コンベンションホール
(東京都千代田区日比谷公園1-4 地下1階)
【参加】
協力費1日1500円、学生協力費1日1000円、3日間通し券3000円、中学生以下無料・事前予約不要
【問い合わせ】
グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会 Tel: 03-6451-2411
【主催】
グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会

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『ハーフライフ・イン・フクシマ』(スイス、フランス/監督:Francesca SCALISI, Mark OLEXA) 3月3日から5日にかけて、日比谷図書文化館で「第4回 グリーンイメージ国際環境映像祭」が開催される。 同映像祭は、環境についての映像作品を世界から公募し、優秀作品を選定、上映するもので今年で4回目。環境に関するものであれば長さやジャンルは問わず、過去には短編アニメーションなども選出されている。 今回は、48の国と地域から応募された194作品の中から15作品を選定し上映する。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || ).push({});
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