今日取り上げる『TOMORROW パーマネントライフを探して』は、女優のメラニー・ロランが世界を救う方法を探るために友人のシリル・ディオンと3年の間世界中の様々なところを訪れたその度の記録である。基本的には「社会はドキュメンタリー」だが、音楽やアニメーションを有効に使い、ロードムービーという形態を取ることで“ドキュメンタリー臭さ”を拭い、軽快な作品に仕上がっている。

地球温暖化や貧困、エネルギーなど、地球規模の問題を扱った映画というのは様々あり、そのそれぞれが1つの問題について掘り下げ、私達に学びを提供してくれている。それを見て「なんとかしなければ」と思うのだけれど、実際に何をすればいいのか、最後にサイトのURLが提示されて「さあアクションしよう!」みたいなことを言われたところで、実際にその一歩を踏み出すことはなかなかない。

作っている側としては、本当に見てくれた人たちを巻き込んで運動に展開していきたいと思っているのだろうけれど、本当に巻き込んでいける人はどれくらいいるのだろうか。考えるという「行動」にはつながるにしても、そこからさらに実際に自分にできることは何なのかを考え、それを実行するところまではまだ乗り越えなければならないステップが存在する。

そのステップを乗り越えるために何が必要なのだろうか?

© MOVEMOVIE – FRANCE 2 CINÉMA – MELY PRODUCTIONS

この映画の監督のメラニー・ロランは人類が滅亡してしまうかもしれないという事実を知り、実際に行動を起こした1人だ。この映画はそのメラニーの旅を観客に追体験させようというものだと思う。それは実際に成功していて、観客は、実際に世界中を旅するとともに、地球規模の問題の本質に迫る思索の旅へも誘われる。

そのような効果を生んでいるのは、メラニーの学びが観客にとって身近に感じられる「体験型」のものであり、ある意味では一人称の物語と受け取れるものだからだ。「トランプ時代の…」の記事でも書いたと思うが、「自分にできることをやってそれを映像としてみせる」一人称のドキュメンタリー映画というのがあり、それらの映画はドキュメンタリーを我々に身近なものにした。最近のものでは『365日のシンプルライフ』もそうだし、マイケル・ムーアがそのジャンルを切り開いたとも言える。

この映画を観て、そんなマイケル・ムーアの『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』に、さまざまな社会問題を総論的に描いている点で似ているとも思ったのだが、「世界侵略のススメ」はマイケル・ムーアの突撃精神が鳴りを潜めた作品で、どこか退屈で平凡に感じられるところもあった。

この『TOMORROW』の方は、同じように総論的に捉えながら、環境から始まり、エネルギー、経済、民主主義、教育とトピックをうまくつなぎながら一つの物語に仕上げている。そのつながりの作り方が秀逸で、難しいことを考えなくても、1つ1つのトピックについてワンステップずつ学んでいくことができるようになっているのだ。

© MOVEMOVIE – FRANCE 2 CINÉMA – MELY PRODUCTIONS

とはいえ、この作品を見た人が直ぐに行動にかられるというものではない。

ただ、「なるほどなー」と納得して、その中で気になったトピックについて掘り下げてみようと思う人は多いかもしれない。かくいう私も、民主主義の部分で気になったアイスランドの市民革命のことが気になって、この「鍋とフライパン革命」について少し調べた(そのことについては別記事「経済危機のアイスランドで起きた市民革命に民主主義の未来の姿を学ぶ ー 『鍋とフライパン革命』(本編映像あり)」にすでに書いた)。

そのような形で、観客を次の一歩へと踏み出させるようなものがこの映画にはあるように思う。

なぜそうなのかを考えると、それが「一歩」であるというのが重要なのかもしれない。この映画はある種のロードムービーであり、この映画の体験も「旅」になぞらえることができる。そして、この映画の旅に結論というゴールはなく、メラニーの旅は続いていくのだ。そして、結論がないということは、観た人の旅も続いていくしかないということだ。観た人がこの旅を続けようと思うなら、次の一歩を踏む先は自ら選ぶしかないし、この映画はその一歩を踏む先をいくつも示してくれているのだ。

『TOMORROW パーマネントライフを探して』
2015年/フランス/120分
監督:シリル・ディオン、メラニー・ロラン
シナリオ:シリル・ディオン
12月23日(金・祝) 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開


http://socine.info/wp-content/uploads/2016/12/tomorrow_main.jpghttp://socine.info/wp-content/uploads/2016/12/tomorrow_main-300x300.jpgishimuraMovieエネルギー,民主主義,環境,経済
今日取り上げる『TOMORROW パーマネントライフを探して』は、女優のメラニー・ロランが世界を救う方法を探るために友人のシリル・ディオンと3年の間世界中の様々なところを訪れたその度の記録である。基本的には「社会はドキュメンタリー」だが、音楽やアニメーションを有効に使い、ロードムービーという形態を取ることで“ドキュメンタリー臭さ”を拭い、軽快な作品に仕上がっている。 地球温暖化や貧困、エネルギーなど、地球規模の問題を扱った映画というのは様々あり、そのそれぞれが1つの問題について掘り下げ、私達に学びを提供してくれている。それを見て「なんとかしなければ」と思うのだけれど、実際に何をすればいいのか、最後にサイトのURLが提示されて「さあアクションしよう!」みたいなことを言われたところで、実際にその一歩を踏み出すことはなかなかない。 作っている側としては、本当に見てくれた人たちを巻き込んで運動に展開していきたいと思っているのだろうけれど、本当に巻き込んでいける人はどれくらいいるのだろうか。考えるという「行動」にはつながるにしても、そこからさらに実際に自分にできることは何なのかを考え、それを実行するところまではまだ乗り越えなければならないステップが存在する。 そのステップを乗り越えるために何が必要なのだろうか? この映画の監督のメラニー・ロランは人類が滅亡してしまうかもしれないという事実を知り、実際に行動を起こした1人だ。この映画はそのメラニーの旅を観客に追体験させようというものだと思う。それは実際に成功していて、観客は、実際に世界中を旅するとともに、地球規模の問題の本質に迫る思索の旅へも誘われる。 そのような効果を生んでいるのは、メラニーの学びが観客にとって身近に感じられる「体験型」のものであり、ある意味では一人称の物語と受け取れるものだからだ。「トランプ時代の…」の記事でも書いたと思うが、「自分にできることをやってそれを映像としてみせる」一人称のドキュメンタリー映画というのがあり、それらの映画はドキュメンタリーを我々に身近なものにした。最近のものでは『365日のシンプルライフ』もそうだし、マイケル・ムーアがそのジャンルを切り開いたとも言える。 この映画を観て、そんなマイケル・ムーアの『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』に、さまざまな社会問題を総論的に描いている点で似ているとも思ったのだが、「世界侵略のススメ」はマイケル・ムーアの突撃精神が鳴りを潜めた作品で、どこか退屈で平凡に感じられるところもあった。 この『TOMORROW』の方は、同じように総論的に捉えながら、環境から始まり、エネルギー、経済、民主主義、教育とトピックをうまくつなぎながら一つの物語に仕上げている。そのつながりの作り方が秀逸で、難しいことを考えなくても、1つ1つのトピックについてワンステップずつ学んでいくことができるようになっているのだ。 とはいえ、この作品を見た人が直ぐに行動にかられるというものではない。 ただ、「なるほどなー」と納得して、その中で気になったトピックについて掘り下げてみようと思う人は多いかもしれない。かくいう私も、民主主義の部分で気になったアイスランドの市民革命のことが気になって、この「鍋とフライパン革命」について少し調べた(そのことについては別記事「経済危機のアイスランドで起きた市民革命に民主主義の未来の姿を学ぶ ー 『鍋とフライパン革命』(本編映像あり)」にすでに書いた)。 そのような形で、観客を次の一歩へと踏み出させるようなものがこの映画にはあるように思う。 なぜそうなのかを考えると、それが「一歩」であるというのが重要なのかもしれない。この映画はある種のロードムービーであり、この映画の体験も「旅」になぞらえることができる。そして、この映画の旅に結論というゴールはなく、メラニーの旅は続いていくのだ。そして、結論がないということは、観た人の旅も続いていくしかないということだ。観た人がこの旅を続けようと思うなら、次の一歩を踏む先は自ら選ぶしかないし、この映画はその一歩を踏む先をいくつも示してくれているのだ。 『TOMORROW パーマネントライフを探して』 2015年/フランス/120分 監督:シリル・ディオン、メラニー・ロラン シナリオ:シリル・ディオン 12月23日(金・祝) 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開